Project CARS™ 3

DEVELOPER BLOG

開発者ブログ #2 ハンドリング

UPDATE : 2020/07/22

Slightly Mad Studiosで物理演算とハンドリングチームが、『Project CARS 3』のハンドリングの感触について、ファンの期待に応えて制作の裏側をご紹介します。

ニック・ポープ(車両ハンドリングデザイナー主任):『Project CARS 3』では、少し基本に立ち返り、乱雑さを取り除きました。そうすることでゲーム自体のハードルを下げ、新規ユーザーの参入をはかる一方、リアリティも維持することでヘビーユーザーにも満足できる内容になっています。

ダグ・アルナオ(フィジックス・AIディレクター):ニックが言ったことを私なりにまとめると、私たちは『Project CARS 2』で実現したリアリティを完全に受け継いだ上で、誰もがプレイしやすいようなシステムを構築しました。そしてファンが切望していたゲームモードを追加し、多くの時間を費やし、時には新しい考え方や知恵を取り入れることで、より人間らしい判断ができるようなAIにアップデートしています。

ニック・ポープ(車両ハンドリングデザイナー主任):私たちは物理学的な観点から、経験豊富なユーザーが求めるリアリティと、新規ユーザーのプレイしやすさの並立を実現するために多くの方法を試みました。ここで重要な点は、ドライビングシステムをどのように改善したかと言うことです。ABS、スタビリティー、トラクションコントロールは、より実用的になっただけでなく、それらのシステムが実際の世界でどのように機能するかに合わせて改良されています。プレイヤーのゲーム習熟度に合わせてこれらのアシスト機能を設定できるようになったことで、ゲームの幅が広がり、プレイヤーは自分の好みに合わせてアシスト機能を微調整することができるようになりました。これはフランチャイズにとって本当に大きな飛躍であり、新規ユーザーの参入しやすさと、フランチャイズの本質である信頼性を両立させることで、例えば、ステアリングホイール式のコントローラーを使うユーザーと、普通のコントローラーを使うユーザーの両方が、自分のスキルに合わせてカスタマイズされたプレイ体験を得ることができるようになりました。これにより、ユーザーにはどの程度の熟練度を目指すかという選択肢が与えられます。

ユシ・カルヤライネン(ハンドリングQAリーダー):核となる物理演算エンジンはそのままに、コアなファンが楽しんできたシチュエーションごとのハンドリング操作の奥深さは維持しつつ、他のシリーズや旧作のファンが困惑したり、難しくて圧倒されたりすることなく、より“シリアス”なプレイへとステップアップしたいと思うような、本物の、ドライビングシミュレーターのあるべき姿を実現した(新機軸を切り開く←わかりづらかったらいりません)システムを搭載しています。アシスト機能をつけたままにしておけば、ヒントだけでなく操作補助が起動し、徐々にゲームに慣れていくことができます。一方でアシスト機能をオフにすれば、コアユーザーが期待するようなチャレンジングなドライビング体験ができるでしょう。ゲームへのアプローチ自体は簡単ですが、やり進めるに従って、ハンドリングの奥深さや機微に気づき、長時間にわたってユーザーを夢中にさせてくれるでしょう。

ケイシー・リングレー(車両テクニカルアート・ハンドリング):Jussiが言うように、MADNESSエンジンであることに変わりはありませんし、物理エンジンも改良されていますが、『Project CARS 3』で目に見えるような形で変わったのはこれまでの経験を生かした最適化です。『Project CARS 2』のSTM(セタタイヤモデル)は素晴らしいものでしたが、プロセッサに負荷がかかりました。さらに、モデルのチューニングに3年以上の経験を積んだことで、骨組みの振動やゴムと路面の間の温度反応などの動的な挙動のすべてに磨きをかけることができました。

デイビッド・カーク(リード・フィジックスプログラマー):リアリズムが改善された部分としては、ダンピングモデルの改良による車体の動きやサスペンションへの反応があります。

ケイシー・リングレー(車両テクニカルアート・ハンドリング):動力伝達系統のフレックスを改良したことが関係していると思います。すみません、ちょっとマニアックな話になってしまいますが、クランク軸、ギアボックスのイン/アウト、駆動軸、車軸など、車の動力伝達系統の様々なシャフトをバネのような結合部で繋ぎ、フレックスを可能にしています。『Project CARS 3』では幸いなことに、いくつかのベンチマークカーの動力伝達装置の様々な部分の典型的なねじり剛性を知ることができる、非常に詳細な参考資料を手に入れることができました。最初、ギアシフト時にエンジン回転数がぐらつくことを想定してモデリングしていましたが、予想通りの結果が得られました。ドライブトレインにフレックスを持たせることで、タイヤのマイクロスリップが少なくなり、より安定した接触面が得られるようになったのです。マイクロスリップを補正する必要がなくなったことで、温度キャップのような内部のセーフティネットを減らして、より完全なタイヤの加熱モデルを使用することができ、スリップによる暴走を防ぐことができました。このようにしてモデルをよりリアルで正確なものにしたことで、より楽しく、よりダイナミックに、より簡単に、よりリアリティのあるドライビングができるようになりました。

ユシ・カルヤライネン(ハンドリングQAリーダー):動力伝達系統、つまりエンジンからタイヤに至るまでのすべての部分の改善が、間違いなく1つのキーポイントでした。この改善によって、問題が生じそうなタイヤの設計をする必要がなくなり、結果的にフィーリングや挙動が良くなりました。特にゲーム特有の“現実を超越してる”感が改善されました。もう一つ動力系統に関連して、エンジンのアップデートによりどのような変化が起こったかについてですが、バンピーな路面や荒れた路面での車体の動きのダイナミクスが改善されています。以前よりもレスポンスが速く、ダンピングが少なくなり、よりリアルな車に近いものとなっています。

ニック・ポープ(車両ハンドリングデザイナー主任):エアロドラフトといった空力のモデリングも改良しました。特にプッシュ・プル時のドラフティング効果の強さは、より現実的なものとなっています。開発中に行われたデイトナでのビックパックでのレースはとても楽しかったです。

ユシ・カルヤライネン(ハンドリングQAリーダー):もちろん、心に留めておいてもらいたいのは、これらのことは全て、ゲームのバックグラウンドで行われているということです。私たちにとって最も重要なことは、プレイヤーが『Project CARS 3』を通して何を感じるかということです。コントローラーの操作感こそが、このゲームの大きなポイントなんです。特にゲームパッド式のコントローラーでの操作性は、旧作ゲームをはるかに超えており、FFBシステムを搭載したステアリングホイール型コントローラーでは、より多くの情報をプレイヤーにフィードバックできるようになっており、より自然で直感的な方法で、車をコントロールできるようになっています。

デイビッド・カーク(リード・フィジックスプログラマー):それは良い指摘ですね。ゲームパッドの操作感は、今回のゲームをデザインする上で、とりわけ完璧にしたかった機能の1つです。ニック {ポープ}と私は、それに向けて生じる問題を解決するために、かなり早い段階からゲームの開発に参加しました。私たちは、車体からくるレスポンスをステアリングホイール操作のようにごく自然で直感的なものとすることを最終的な目標とし、これを実現する上で、従来の“RCカー式の運転方式”から脱却する必要がありました。また、ステアリングホイール型コントローラーを使用するユーザーのためにFFBを改良しました。ユーザーはより直感的でリアルな体験ができるようになり、その結果、ゲームをより寛容で予測可能なものに感じられるようになっています。また、車を切り替えた時にFFBを設定変更する必要がないよう、車両間での差を減らし一貫性を高めるために時間をかけました。そしてそれがうまくいったことに満足しています。

ユシ・カルヤライネン(ハンドリングQAリーダー):あらためて考えてみても、コントローラのハンドリングを一から見直したことは、とても素晴らしいことでしたし、素晴らしい結果が得られたと感じています。『Project CARS 2』を作った際も『Project CARS』に改良を施しましたが、2から3への変化は、飛躍的で桁違いのものとなっています。ゲームパッド型コントローラーでの操作に関しては、より根本的な部分で物理的に適切に動作するようにやり直したため、ゲームパッドに対応するための物理的な変更は必要ありませんでした。もはやゲームパッドコントローラ(の種類)によって、車両の設定を変更する必要はありませんし、ゲームパッド自体を調整するための設定も必要ありません。これはフランチャイズにとって大きな飛躍であり、デザインの全面的な見直しを必要とするものでした。これがどのようにして実現したのか考えると、私たちは本当に興奮します。

ニック・ポープ(車両ハンドリングデザイナー主任):ゲームパッドを使って車を運転することは現実にはないので、レースシミュレーションでは難しい操作方法になることがあります。ステアリング入力には親指用のアナログスティックを使用しますが、親指でステアリング操作をすると、ハンドルいっぱいに切る(full-lock)か、何もしない(none)かを瞬間的に繰り返す(fluckers)ことになり、本質的にはデジタル的な操作となります。『Project CARS 3』では、より直感的に操作できるようにゲームパッドでの操作を全面的に見直し、必要なときに適切なロック量を与え、接着面を極限までフィードバックするようにしました。私たちはユーザーがステアリングホイールで運転しているかのようなリアルさを体験できるよう努力し、ユーザーが自分に合った設定を見つけようとしたときに起こるフラストレーションを取り除こうとしました。ゲームパッドの設定はもう必要ありません。その結果、他の追随を許さないゲームパッド体験を実現しています。

デイビッド・カーク(リード・フィジックスプログラマー):ゲームパッドの操作感を向上させるために、ヨーレートやドリフト角などに加えて、フロントアクスルとリアアクスルの両方のピークスリップ角を最大限に活用するために、得た知識を活用してきました。『Project Cars 3』のためにゲームパッドの操作を改良した際、物理モデルにおける自然な適合性のおかげで、最初の実装がいかにうまく処理されているかに感銘を受けました。それに加えて、数ヶ月間の反復と改良を経て、現在の『Project Cars 3』が完成しました。

ニック・ポープ(車両ハンドリングデザイナー主任):これを達成するための大きな後押しとなったのは、より広範なシミュレーションを行うことで得た進歩です。ダンピングの改善により、路面の段差に対する車両の反応がより自然になり、動力伝達装置の動作方法の改良により安定性が向上し、基礎となるタイヤモデルがより一貫して安定しています。さらに、オプションのドライビングアシスト、ゲームパッドコントロール、ステアリングホイール型コントロラーを使うユーザーのためのFFBへの進化は、プレイヤーへの情報の伝達を強化していることを意味し、プレイヤーが素早く反応し、車を限界までプッシュする際に、より多くの情報と時間を与えることを可能にしています。『Project CARS 3』では、フラストレーションを取り除き、より幅広い能力に対応するためのオプションを用意し、プレイヤーがトラック上でのバトルやレースに集中できるようなものを作りました。

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